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ボジョレーヌーボーとフランス情報局の関係

 

ボジョレーヌーボーと風刺新聞(カナール・アンシェ)の関係よりつづき。

ロイター通信のブースト

最初の頃のボジョレー・ヌーボーの出荷量はつつましやかなものでした。1960年で1000ヘクトリットル。最初の頃はヌーボーなんて本当に大丈夫なのかしらと疑う現地生産者もいましたが、

ジャン・ティキシエという、ボジョレー出身のやり手の広告マンが、1964年にメゾンを設立したジョルジュ・デュブッフ(写真右のジョルジュさん、左は息子のフランクさん)の大成功の裏の実力者といわれています。

この広告マンのいた、アジャンス・アヴァスってのがすごいの。本名は「アヴァス通信社」ユダヤ系フランス人のシャルル=ルイ・アヴァスが、1835年に創業したフランスの通信社なんだけど。もともとナポレオン1世時代にフランス軍の大本営発表を新聞社に配信したり、御用新聞「ガゼット・ド・フランス」の経営に携わったりしてきた歴史ある会社。1940年のヴィシー政権では政令でアヴァスの報道部を「フランス情報局 (Office Français d’Information, OFI) 」に改め、にフランス政府に接収されるんだけど、のちの「ロイター」の前身でもあるんです。(バルザックの時代からフランス国内の政治報道は事実上アヴァスが独占していたそうです。このことでアヴァスのことを酷く批判したそうですけど。。。。)

で、現在は広告部門だけがアヴァスという名を残し、アヴァスエージェンシーと世界的な広告会社。だってここがデュブッフとボジョレーヌーボーやりましょうか〜ってやってくれたら、なんかそりゃ、なんかすごい影響力ありそうですものね。そうか、世界におけるボジョレーヌーボーのお祭りも実は広告会社がお膳立てしてくれたのですね。なんか納得できました。(日本で言うD通なのかなぁ)。

ワインチェーン店ニコラのブースト

アヴァスだけではありません!ワインチェーンで有名なニコラのクルチエ(ディーラー)であったピエール・ボワセも頑張って、販売方面で影響力を発揮。10年ほどしてやっとボジョレープリムールが定着してき、「早飲み」の収入は生産者達も「早回収」ができ、波に乗ってきました。そして1970年にはもうすでに1万ヘクトリットルへ上昇!アゲアゲ!

それだけではありません。ボジョレーヌーボーは売れっ子作家のルネ・ファレの小説に登場、ベルナール・ピボ、(有名なテレビの司会者)ピエール・ボンテ、ステファン・コラロなどの影響もあり、一気に広がりました。

また、エドガー・フォール元首相をもかつぎだし、国会議事堂でヴィンテージ1975年産の洗礼?をテレビでやったり。。まぁまぁまぁあげればきりがないほどの大がかりな宣伝活動をやった効果がこのボジョレー祭りなのですね。それが効をなして1998年には生産量14万ヘクトリットルに。(うち輸出は80万ヘクトリットル。ヌーボーは全体の半分)

人気に陰り・・・

しかしそんなに長くは良い時代とは続かないもので、ボジョレーヌーボーが2007年には前年度の22%減という危機に直面してしまいました。そうよ。平家だって続かなかった・・・(それとは違う)2012年においては、雹の影響で不作だったボジョレー地方の11月第三水曜日夜のお祭りさえも経済危機のために中止に追い込まれたりもしました。お祭り気分の裏で小さい作り手は農業をやめるかやめないかで深刻な事態に面しているのは確か。現在までのところ、ローヌ県によると3分の1の農家は支払いができないとのこと。地方の援助を求めているそうです。実はお祭りの裏に農家の危機は忘れてはいけない事実なのね。そう、どこもここも同じ。このような状況を救おうとあのフランス極右国民戦線党のマリー・ルペン女史が、ボジョレー・ヌーボーのキャンペーンガールをしているというのは嘘で、EUの農業政策に反対のためボジョレーで集会を開いたのも事実。。。こんな世の中になっています。

参考資料:Marine Le Pen dans le Beaujolais pour alerter sur le sort de la viticulture

今のところ、新興国、ロシアや韓国がやっとボジョレーヌーボーのお祭りに気がついてくれたようで、彼らの消費に期待か首の皮をつなげる覚悟でいるそうですが、正直、なんとも不安定な時期に入ってきたようですが、前世紀末のボジョレーヌーボーの成功は世紀のシンデレラストーリーだったのでしょうか。このビジネスモデルは見直しが必要な時期に来てるのでしょう。でも、まだまだひきずりたいというのが本音なのでしょうか・・・・だって、私はそんなことより、ヌーボーで年末の宴会季節の幕開けを楽しみたいだけなのですが。木曜日に乾杯!

フランスの次に日本で乾杯がダントツ!

参考資料:Beaujolais nouveau : derrière le côté festif, des viticulteurs en crise

Le Beaujolais est-il en crise ? par LyonCapitale

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