ぷちレビュー

映画とか本とかコンサートとか展覧会とか

『Adult in the room』黒い匣

2015年のギリシア緊縮財政のさなかに選挙に当選し財務大臣になったヤニス・ヴァルハキスのヨーロッパから受けた嫌がらせを描いた話し

って言えばいいんじゃないかしら。彼の現役時代の政治回想録のタイトルね。

https://www.theguardian.com/books/2017/may/03/yanis-varoufakis-greece-greatest-political-memoir

Adult in the room がどこから来たかというと。。このフランス人女性。。IMF議長ラガルドさん。

それにしても
Portugal
Italie
Grec
Spain

でPigs豚とかヨーロッパ議会の意地悪っぷりたらありゃしない。

「借金は借金だ!ちゃんと返せ!」と叫ぶドイツ

エレガントに振る舞うが結局は大国の言うことを聞くフランス

それにしてもメルケルは神、鶴の一声、宰相というだけあるわ。マクロンさんはやはり子供。ちなみにこの映画でメルケル役は出てくるがセリフはない。

それにしても最後のシーンはなかなか良かった。流される感。ああやって出すのか。。と。

こう見えても唯一ヴァルハキスの話を聞いてやろうと試みたのはスカーフの女王クリスティアンラガルド。読んであげようじゃないの。冷静に中立を保ちたいのだが彼女だってエスタブリッシュメント。

終わってからヴァルハキスのwikiで見たんだけどすんごいインテリなのね。英語も流暢だしびっくり。服装は結構ダサいけど、まぁそれはたいしたことなくって、理論的で国を思ってる政治家。。

ただこの映画を見たあと、本当に政治という業界はほんとうに最後の砦なのねと思わったわ。ヨーロッパEUって全然多様性もないし、国際組織と名のつくところ例えば国連とかでもすべてそうなのかもしれない。いわゆる省庁もそう。役人のところって結局はそうなのよね。。。

EUってところはまだまだ第一次世界大戦のエリート主義の頭。なのね。

ただこの規格がないと彼らも次の規則や基準をつくれないんだろうとおもった。これだけ違った考えをまとめていくためなにが大事なのか?すべての要求を応じられない現実にどう対応していくか。ドイツ的画一主義だけではもうほつれが出てるのをみんな知ってる。

考えさせられたわ。

原作はこの本ね

黒い匣 (はこ) 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命――元財相バルファキスが語る「ギリシャの春」鎮圧の深層 ヤニス バルファキス https://www.amazon.co.jp/dp/475034821X/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_HVbZDbY6PM5CE

EUに関心のある方向け。

『失くした身体』J’ai perdu mon corps

Netflix でもやってるけど映画館で鑑賞。


もてあます感受性とどう向かい合うか。

最初の蝿の雑音が最後のシーンでも重要な役目を果たします。

ノーフェルはチェリストのお母さんと優しいお父さんと一緒だった子供時代の思い出をずっと持ってる。テープレコーダーで録音した子供時代。すべてがこのカセットテープの中に入っっている。

彼はもともと感受性豊かな賢い男の子。
マグレブ国に産まれたのだろう。孤児としてフランスにやってきてもうまれながらの品の良さはいくら荒んだ生活をしてもふっと無意識に現れることがある。人に愛された記録がある若者。まだまだ人生に絶望していない。かといって希望にあふれてるわけでもない。その記憶の貯金を毎日使っている気もする。

切断された手がもとの場所を求めて旅するのはありえない展開だけど、ありえないがゆえのパリ郊外の景色の荒廃ぽさとアニメのデティールはあり得る。パリの深さを出してるわよね。
この子達の喋り方も非常にパリジャンっぽい。

若者の孤独
もてあます感受性
これからの長い人生

無意味な場所で出てきた宇宙飛行士人形は宇宙兄弟を思い出したわ。そしてガープの世界。すべて意味があるんでしょうねぇ。

何が良かったって。アナログな音ざわっとした感触心までざわっとする。 もっと短くってもいいと思った。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のつぎはぎっぷり

ひとことでいうと。。。。。。。。ハリウッド蒲田行進曲な20世紀少年ね。。なんか全体的に既視感が。。 (このふたつを見た人にはわかってくれる)

映画オマージュはだいたい業界の持ち上げにしか見えないんだけど、、そういう映画って多いし、映画フィルのあたしみたいなひとはうるうるするし。

すべてのシーンが自作の全作品のはりあわせなんじゃないの?的な。。だから映画をよく見てる人にはデジャヴュというか「ニヤ」シーンが多いというか。特にあたしみたいなタランティーノとともに中年になってしまった世代にとっては「かっこいい」ツボが似てるのでやっぱりいいです。

女の子が「ディズニーは天才よねぇ」とかしみじみいわせるところとか、、逆に白々しい。。。それ本当だもの。

芸達者なデカプリオと実は隠れ芸達者ブラピの大共演。

とりあえずハリウッドのオマージュ満載で69年頃のバックグラウンドの予習から。普通知らないよねぇ。ポランスキーなんて。。あたしにとってポランスキーっていうとペド兄さんとしか意識がなかった。。奥様殺されてたとは知らなかった。

レオ様が落ちぶれの西部劇俳優で、ブラピがその彼のダブルスタントマンの役。俳優でも顔の出ない後ろ姿や乗馬シーンとかの俳優だから、そんなに稼いでなくて普通にレオ様の運転手をしてたり、まぁ小間使的な位置。

西部劇の終わりテレビ時代の幕開け。

デカプリオの中年の苦悩、生きづらさの見事な表現、ふと思ったんだけど、この人私が若かったときに見たジャック・ニコルソンとかロバート・デ・ニーロ的な位置にいくんだろうなぁ。ひょうひょうと酒も飲まずにベジタリアンに生きる影武者のブラピの方がクールに生きてる対照も面白い。「I Tagna」で見事なホワイトトラッシュなビッチをしてくれたマーゴット・ロビーを綺麗どころだけに出演させるのはもったないけど、時代背景といえば仕方ないわね。

スターウォーズやランボーシリーズ、マーベルシリーズの前のハリウッド。なんにも知らなかったのよあの頃のアメリカって。

ビバリーヒルズ住宅地のの高騰前の雰囲気。当時流行ってたであろう家庭に一台のミキサーを妙に大事にする仕草とかすごく好き。

ただ、殺し方はキル・ビルそのもの。(ネタバレというか、それしか見せ場ないんでしょ?的な)

そして最後のタバコの広告は映画だからやってしまうという悪趣味なジョークなんでしょうか。

ラリったブラピと対峙するヒッピーはまじ気の毒だったけど、映画としての楽しさもいっぱい。だから映画はいい。楽しいから。

正直この映画はメジャーじゃないですから。ま、カルト映画として趣味の人が、「これ面白いよぉ」と言うための映画のような気がする。ただこんな宣伝してしまって別に感動の大作でもないし、世紀のお手本になるような話でもないし。なんでこんなに騒いでるのかわからない。ちっと辛口ですが、お洋服も美術も大好き。でもタランティーノ大好きだから何でもいいの。。

『基準外』Hors Normes

Aquaboulevard Gaument で鑑賞。

どうしましょう。私もう映画見て最近泣いてばかりいます。これもすごい映画。ヴァンサン・カッセルっていうと、モニカ・ベルッチの元夫とか、美女と野獣の野獣とか、オランジーナのフランス人ぐらいしかイメージのなかったんですが。。。彼の新作、そして『最強のふたり』の監督といえば、また泣き笑いのヒューマニティ?。。。

いえいえ今回は自閉症(10代から就業年ぐらいまで)の施設の現状を描くという。。ま、パッと見もしかして「重い?」なんですが、重いです。ほんとに。

ものがたりは、毎日忙しいこの自閉症の子どもたちを預かるデイケアNGOに、ある日国の監査がはいるのですが、監査官たちが自閉症の子の母、重症の自閉症の病院の病棟長、などのインタビューによってこの映画が進んでいきます。とはいえこれは本当に話なのです。

ブルノ(ヴァンサン・カッセルいつもキパをかぶってるユダヤ人)は自閉症のデイケアを担当、そして、もうひとりのマレック(レダ・カテブ・イスラム教徒)のはその子どもたちを世話する郊外の若者たちをまとめて教育してまともなエデュケーターとして育てる役といっていいでしょう。このふたりの組織がくっついて子どもたちのデイケアになっており、一見とてもうまく回ってるように見えるのですが、それが基準外なのです。。。というのもエデュケーター全員がもともとだいたい郊外のドロップアウトの若者なんで、資格なし、遅刻はする、約束守れない、すぐ諦める、長いフレーズが作れないから始まります。そして借りてるデイケアの場所も狭い場所に子供を詰め込んでるや音を出すのでで近所から苦情が来る。。あきらかに規則をまもってない。基準外です。ブルノは小児自閉症病棟や親たちからの電話がたえない。仕事の鬼。そしてひとりずつ丁寧に答えるので女性を紹介してもらっても全然デートに進めない(これはヴァンサン・カッセルらしくない。郊外のワルたちを丁寧にいちから人間扱いし、話しをし、責任感の持つ子に育てるマレックの兄貴っぷりはさすが。スケートにも連れていきその自閉症児だけではなく名もないエデュケーターたちも育てていく。

この映画の良さは徹底的に障害者に対する「かわいそう」がないこと。お涙ちょうだいをいっさい突き放しています。この表現の潔さが監督のセンスなんだなと思いました。障害者映画ってだいたい24時間テレビ的なエッセンス必ず入るのですが、まったくないです。「最強のふたり」はそれを飛び越えた富豪という設定でしたがこれは普通の障害児たち。補助金を切られる危機に瀕しているのもこの映画に緊張感を与えます。ただ、普通の人間として、そのまま。淡々と、ドキュメンタリーのような映画。人間愛って言うと恥ずかしいけど、ほんとに人間ってこんなことするんだよ。と描いてくれてほろっと涙が出る。

これは実際に19区にあるNGOの話ですがほんの数キロ先には金融の街ラ・デファンスがあり、花の都パリの象徴である凱旋門があります。華やかな影にこういうところもある。同じパリ。重いけど感動した。ハリウッドスターのヴァンサン・カッセルがこの映画に出てくれたことに本当に意味があると思いました。だって見に行くもん。

そして素晴らしいことに、映画館で上映後に拍手が起こったという奇跡がありました。本当にこういう映画はたまに見ないといけません。地味ですが素晴らしい映画でした。

https://www.lci.fr/psycho/un-petit-miracle-le-film-hors-normes-peut-il-faire-changer-le-regard-sur-l-autisme-2136454.html