コンテンツへスキップ

エクサンプロバンス夏のオペラ祭もバリアフリー

昨日はエクサンプロバンス 夏の大イベントであるオペラ祭を鑑賞してきました。エクスの夏は自分の人生が嘘じゃないかと思うぐらい美しすぎます。この非現実な美しさ。いままでの私の人生はなんだったの?って思うぐらい光がいっぱいで、乾いてて。

さてオペラ祭り、最近はフェスティバルエックスと改名され、オペラだけではなくオーケストラなどの演奏会など毎年7月1か月かけて小さな町の数箇所に劇場で開催されます。

もともとはモーツアルトのオペラを催す祭りとして始まったのですが今年の目玉はなんといってもビゼーのカルメン。忘れないうちに昨日見た感想を少し。

カルメンというと劇的な女!のイメージのごとく、「あたいの男はあんたみたいなスカした男じゃないんだよ」とジプシー色気たっぷり。超クラシックなわかりやすいオペラとすぐ思いますが、この題材をどのように料理するのかが オペラ祭りの楽しみ。

今回はオペラセラピーという 劇中劇を見せてくれました

舞台は現代。服装も男性はスーツ女性はオフィス服。倦怠期の夫婦がセラピーを訪れ「オペラセラピー」にサインをします。サインをした途端、その夫婦がオペラの中に紛れ込むという非常に想像力豊かな舞台設定です。倦怠期夫婦も旦那は無理やりドン・ホセへ。奥さんはドン・ホセのフィアンセのミカエラの役を与えられ兵士やカルメンも実は現代のオフィスで働く人の格好で出てきます。(ショムニっぽい)

ビゼーが見たらびっくりするようなありえない設定で話は進みます。最初はつまんなそうにしていたドン・ホセも(どの舞台を見てのドン・ホセは恋に悩む男役なので憂鬱そうな顔をしてますが)

第一幕第二幕ではカルメンがフェロモンをふりまくりなのですが、それに乗り気でなかったドン・ホセが第三幕からはもうのめり込んでめちゃくちゃ元気に歌いまくるのです。

その幕の合間にはかならずセラピー役が出てきて「もっとこのセラピーを続けますからね」とかいちいちナレーションがはいるところも斬新でした。

そして特筆すべきはあたりまえですがカルメン役が魅力的な役者であるところ。

カルメンは美しくないといけません。いくら声が良くてもたとえ演技がうまくてもきれいな人でないとこの愛され役には説得力がないのです。歌手であるだけではなく演技力も。これだけ映像の時代なんですからカメラ写りが大事にされるのはあたりまえなのかも。

「私はわたしの好きな男を選ぶの」

と歌うカルメンにドン・ホセは恋い焦がれるのですがこの強い女性の一言は19世紀の女性にどう感じられたのか想像力が膨らみます。今回のカルメンも非常に美しい方だけではなくチャーミングというか恥ずかしそうな仕草がなんとも好感が持てました。ただカルメン像も女性の変化とともにこの100年以上で微妙に変わったような気がします。強い女性とは何か?永遠のテーマではありますが自由な女性が一番強いのかもね。
自由であること。自分で選ぶ事のできる女性。。目指すわ。

残念だったのか、良かったのか、、いちいちセラピー役の役者が出てきて現実に戻してくれるところです。つまり音楽がブチブチきれ自分の意識もたとえ劇中劇でもどっぷり入ってるのに引き戻されるところに少し違和感がありました。あとこれは仕方ないんだけど男性歌手の米語なまりがひどくてちょっとムードが壊れたけど。カルメンは舞台がセビリアなんだけどフランス語だからコーラスの子どもたちもみんな楽しそう。(うちの子にきいたんだけど子供コーラスは子供合唱団の定番曲らしい)

それでもこれだけ国籍もバックグラウンドも違う歌手たちがこうやってひとつのオペラを作り上げるというのも大変だったでしょう。

伝統的なテーマを現代味付けにする大胆さというか遊び方。オペラも伝統芸術とはいえ現代人に受けないと人は劇場に足を運んでくれません。そうでないと生き残りません。このあたりのバランスをよく踏まえてるなぁと感心することばかりでした。

私は恥ずかしながら歌舞伎は数回しか見たことないのですが、オペラも然りあらすじをだいたい理解しておいてYoutubeなどで他の作品を見る機会があれば見てそれから見に行くと「なるほど、こういう演出ね」といろいろ比較できて楽しいのではないかと思います。

ちなみにこの席は当日券で15€でした。(普通に売りに出されてるのは120€からとか。。多分もうシステムのエラーとしか思えない料金。かなり自慢・笑)。もしみなさまがのヨーロッパにいらしてちょうどその日にコンサートなどがある場合、是非とも当日券をお探しください。必ずありますし、たとえ「見えない席かも」って言われた場合でも意外といい席であることが多いです。とりあえず安い席でもいいから観ること。とりあえず日常から非日常へ連れ出してくれるこの機会を逃してはいけません。

この舞台のために多くの人が人生の時間を使い研鑽してきた方の表現の場なのですからそれだけでも胸いっぱい。気の遠くなるような身を削り時間を削り、私のために見せてくれてありがとう。

ひょんな出会いでしたが愛すべきカルメン。また夢を見せてください。

会場:Grand Théâtre de Provence (もちろんバリアフリー)会場にはたくさんの車椅子の方も鑑賞されてました。