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アルジェリアの女子大生『パピチャ』

10月はあたりが多くてこれもすごく良かった。 Gaument Convention にて鑑賞

日本がまだバブルの残り臭でまだまだのイケイケを謳歌していた頃のフランス隣国アルジェリア。アルジェリア戦争、フランスからの独立を果たし社会主義を経て傷つき誇り高くもフランスとの関係はつづく国。

暗黒の1990年代のアルジェの学生寮での出来事。あのちょうど「神々と男たち」が起きたころね。あの映画も衝撃だったわよねー。。田舎ならこれはアルジェの都会の話。女の子が結婚前に親元を離れて住むのはタブーとされていた(日本もそういうのはまだまだ残ってて30年前は女の子は下宿禁止はたくさんいた)時代、大学寮が親公認のひとり暮らし場所。とはいえ抜け出して夜遊びはするし、タバコも吸う。もちろん学生寮は男女別でパリアクセントの寮母も健在。寮則を破りながらも青春を謳歌する女子大生グループのはっちゃけ具合がとてもいい。

お転婆がささっとコントロールがあるとヒジャブをかぶり淑女になる。あの調子の良さは日本女子にも通じる。主人公の友達がファッションがだんだん男の好みになっていくとき「あんた、今までフェミニスト気取りだったけど結局男の好みに自分の服装もじゃん!なんなのそれ!」と言われるシーンもすごく胸にしみた。みんなそうだもん。好きな人ができたらその人にあわせたい。でもあわせたくない面だってある。いろいろつまってるのね。女の子だもん。弱かったり強かったり

時代背景的に、実際この時期に多くのアルジェリア人が頭脳流出、財産流出と社会不安、テロリスト、停電、フェミニズム。。多くの私がであう普通の階級から来たアルジェリア人は隠してるけどすごく傷ついてフランスにいるということ。ルノーの自動車工で連れられて来られたアルジェリア人も1960年代にはいたけど、全然そうじゃないこの時代にフランスにやって来た人も私の周りでは多く、すごくみんな普通に真面目に働いてるし、そのままアルジェリアにいてもみんなそこそこのポストに付いてた人。。。

そんな重い空気のなか、寮内のファッションショーを寮母の許可を得てやっと開催できたと思ったところで。。信じられないことが。信頼していた布店の店主のチクリで原理主義者の寮内の乱入。そして襲撃。友人たちの死。。(ネタバレね)

ひとつひとつの描写やこの女優さんの演技が上手くて最後は泣きました。ほんとうに、、久しぶりに映画館で泣きました。なんでこんな理不尽なの?

それでも女は強い。女性を描かせればアドモドバルもすばらしいんだけど、この監督の女優さんの肌の描き方がほんとうにいい。身体を愛してしまう。シャーリーズ・セロン みたいな作られたボディは誰もいないけど彼女たちが自然のアルジェの海岸で普通に笑ってる女の子たち。

男に騙されたり罵られたり犯されそうになったり、孕まされても、泣きながらでも裸足でも生きる女の子たち。おんなに生まれてるからこれだけみんな苦労してるの。でも苦労なんて思わない。

これをアルジェリアだからアラブだから。。なんて思えない。どこに生きてても同じ。女は女の社会的役割をいつも期待されて生きていく。

最後ボロボロなのに「アルジェ中の女性を着飾りたいね」と将来の夢を語ったり、イスラミストに娘を殺されたお母さん、友人を殺された娘たちが一緒に生きていく。

もちろん30年後の今だって理想社会とは言い難い。グローバル化の野蛮な資本主義化でいままで植民地、社会主義と歩んできた国民がすぐすぐ適応できてるとも思いがたい。。それでも生きて行かなければならない現実。色々考えさせられたわ。ということで近代史の勉強にもなりました。この映画はオスカーの外国語映画も狙ってるらしいけど、獲れるんだったらとってほしい。すべての大人の女性が過ごした20代前半のあの頃を思い出してほしい。Pipachaとはアルジェのスラングで「イケてる女」という言う意味らしい。

ほんまアルジェリアの男って最低としか描かれず逆に可愛そうなんだけど。ま、それはそれでいいよ笑。社会にいじめられても、ボーイフレンドに偉そうにされても、テロリストに脅されても、女は生きのびろ!女の子万歳。