中国で暮らす肺癌で余命の短いおばあちゃんのもとへ海外(NYと日本)に散らばっていた息子家族があわてて一同する数日間の家族リユニオンの話。
もちろん帰る先は中国本土。突然帰ってしまうとおばあちゃんが怪しがるので一人の孫が急に中国で日本人と偽装結婚をするという話になってたり。
つまり本人のおばあさんに余命が少ないことは内緒。中国では普通余命など本人には宣告しないらしい。(医師もそういうセリフあり)
米国育ちの中国人でNYで奨学金獲得に失敗したばかりの複雑傷心オークワフィナは日本在住いとこがなぜ偽装結婚までしておばあちゃんを騙すのか納得行かない。
途中で
「病名を言わないだなんてアメリカでは法律違反よ」
とお父さんと叫び合うシーンもある。
この映画は終始彼女がいつおばあちゃんにバラすかそれで結構ハラハラさせられます。
私はオークワフィナがお母さんに
「おじいちゃんが死んだ時も見送れなかった」
「ここにはたくさん親戚がいたのにアメリカに行けば3人だけの生活になってしまった」
とかいうセリフにいちいち心打たれました。新興移民たちの心の拠り所のなさを泣きながら言うんです。
私の心を代弁してくれてありがとう。
中国人の新婚写真のこだわりも面白おかしく見せてくれる。
おばあさん役の女優さんがやたら美しくしかも台詞をかなり昔のゆっくりとした話し方をされる方で彼女のエレガンスさがとっても目立っていました。長い間芝居をやってこられたのだなあという感じ。一人だけ中国的芝居なの。
この映画はオークワフィナの不機嫌そうな理解できない顔ばかりが多くそれがいい味を出してる。(しかしこの人おもしろすぎる、彼女のインスタはかなりファンです)
私の経験から言うと彼女のようにピュアアジアンな血(見た目)の子は西洋でも小さい頃からアジア人であることを社会でも期待されるので実は普通の米国人よりかなりアジアンであると思っている。つまり東洋的な優しい嘘など対応の飲み込みが早い。
見た目はアイデンティティの一部でもあるからオークワフィナのような存在は人を混乱させる。簡単なカテゴライズが効かないから。でもこれは決してアジア人対西洋人ではなく別にどんな人でもそうなんだとおもう。ただ、私達の外観はアイデンティティであることも忘れてはいけない。だからMattだってアイデンティティはあのMattになるんだとおもう。(なんか話がとぶ)
まぁネタバレになりますが最後、彼女自身も中国に残りたいと言い出すシーンとかはわがまま言ってるんだけど、でもその気持がわかったり。。
ハーフになりクォーターになるとだいぶどうでも良くなるようだけど。。
『Coco』は先祖を覚えててというメッセージで終止していたがこれは東西文化のアイデンティティ問題を合わせたような、欲を言うとそれでも本当はもっともっと表現を深く掘り下げて欲しかった。ちょっと表面的すぎるかな。終始オークワフィナの反応だけで、他の人の飲み込み方や妥協の仕方ももっと描いてほしかった。
彼女の反応は、この映画の美術である最近急いで建てたような美意識のかけた建築の中国の景色がそれを揶揄しているようでした。
監督が強調したかったと思われる壊れやすそうなペランペランさは私の好み。なにか、なにかなにかをそれに通じて見せている。対照的に出てくるNYのもっと匂いのしそうな猥雑さとは違う。サラッと描いてるけど、サラッと気になる映画です。