Amazon プライムにて鑑賞。
何年ぶりにみたのだろう?一度目は37歳になる前にこの映画を見てたとおもう。37歳といえば古いけどあの渡辺淳一の『失楽園』の女主人公の年だ。前世紀の意識では女盛りだったのか?
有名なこの映画の中に出てくるサントラの歌詞がいい。
「白い郊外の家、旦那を仕事に送り、子供を学校に送る。ルーシーは気がつく。37歳の今、彼女は髪を風に揺らしながらをスポーツカーでパリの街を走ったことないことに。。」
Ballad de Lucy Jordan
シュールな歌詞にこのテルマ(ジーナ・デービス)にアメリカの地方都市の女性たちの主婦の行き場のなさなのかと思いこんでたのですが、2020年にこの映画を見ると全く違う視点で見えることに気がつきました。
これって本当に #metoo の映画なんですね。出た当時のまだ若かった頃の私は「主婦の鬱屈と元気なシングル友達」みたいなイメージだったのですが、2回めでわかった!この映画は男の言葉やほんとのバイオレンスにさらされている女たちの叫びなのです。
スーザン・サランドン(ルイーズ)とジーナ・デイビス(テルマ)はなぜ逃げているか? 主婦のテルマが人生初?!いばりくさる夫を離れ、親友ルイーズと週末旅行の途中、バーでダンスを一緒に踊った男に駐車場でレイプされそうになる。最初からここまでのテンポは早い。もちろん最初はルイーズもその男の横暴をやめなさいと言ってただけなのですが、しつこくやめない。テルマがたまたま持ってきた銃を出し、その男のレイプ寸前現場をやめさせる。。そして、やっとその男が諦めて離れたときに吐いた捨て台詞が彼女にスイッチを入れてしまった。彼女の過去をフラッシュバックさせたのでしょう。その言葉で引き金を引いちゃったわけです。
最初は野暮ったかったテルマのお化粧、ふたりの立場態度、そして服装もだんだん変わっていくのもこの映画らしいところ。あとアメリカのマルボロのような美しい景色がたくさん出てきます。もちろん彼女達が逃げる車も目立ち過ぎぐらいかっこいい。
アルバイト先のダイナーの厨房でのタバコ、公衆電話、個人の取次電話、ポラロイドカメラ、州を超えればお金さえ昔はマネーグラム?で送ってた名残、シートベルトさえないオープンカー。。。
アメリカの公衆電話カッコいいんだよ。。途中でテルマがルイーズの長話を切るとこも好き。長いケーブルをつけた固定電話をベランダに持ってってタバコふかしながら長話。。とか本当に大人っぽい。タランティーノが過ごしたアメリカなんだろうなぁ。
ここは決して石畳のパリではない。アメリカの乾いたオクラホマからテキサスを通らずにメキシコへ行く道を探してる。ジーンズ、カーボーイキャップが馴染んでる。
彼女たちは犯罪者の定番通りメキシコへ逃げるんですがなぜかルイーズはテキサスを通らないという。その頑な決心の理由を共有してるのは地元刑事のハル(ハーヴェイ・カイテル)だけ。昔の#Metoo的事件の被害者であったルイーズにとって心の傷は癒えてない。
結婚しようと言ってくれている恋人にだって言えない事がある。それを知ってるハルは逃げまくる彼女たちの大いなる理解者であり、最初の事件は正当防衛であると電話で伝える。でももう少しずつ狂ってきた歯車は止まらない。狂ってはいない、決心した女達のほうが先に進みすぎただけだ。
そしてなんといってもハーヴェイ・カイテルがまだ若い。あのタクシードライバーでジョディー・フォスター相手にピンプやってたあのおっさん。ちょうどこれで中年のいい役。ブラピもチンピラ役で出てますが声がにゃにゃにゃにゃ言って子供みたい。タランティーノの常連の俳優さんも出てくるし脇を固める人たちが安定してるのも素晴らしい。(彼、ワンサポンナタイムインハリウッドにも出てたね)
最初はルイーズがイニシアチブを握っているのですが、テルマが生き生きしだす頃からこの映画の面白さが加速。
最後追い詰められて、デルマの「このまま続けていこう」と決心の時の目の合図や、女性二人の接吻などはブロマンスの女版そのもの。何回見ても泣けてくる。テルマの最初の能天気ぶりと後半のやっと人生を自分でコントロールできるようになった頃の彼女の過激っぷりさ。こんな映画が30年前にしかもリドリー・スコットが撮ってただたんて。
小さな追い越し時のセクハラなんてよくある話。かもしれない。でも彼女たちはそんなやつらにも制裁を与える。マジ気持ちがいい。あたしたちに謝りなさい。できないの?捨て台詞まではいちゃう?そんなやつには制裁を。
そうなんです。そんなこと本来やめてほしいんです。
今ではもう当たり前の権利であるが当時は少し過激と思われたかもしれない。
でも決して過去には戻らない。ラストに追い詰められる過程が映画の中に出てくるお金を取られたりするシーンからも心理的に迫ってきます。(ブラピをボコボコにするハーヴェイまたかっこいい)
そして最後のスローモーションのハーベイカイテルの後ろ姿に涙。スローモーションってのは古典的な映画技術すぎるんだけどそれでもしらけない。
本当に素晴らしい映画。やっと時代がこの映画に追いついた気がする。超傑作。
James Cordenも好きみたいねー。違う終わり方編。