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『ヒルビリー・エレジー』引力と、おばあちゃん

ホワイトトラッシュという言葉はあまり好きではない。だがどんなのか?というのがなんとなく想像できたけど、このグレン・クローズとエイミー・アダムスの恐ろしいなりきりっぷりがすごかった。そういう家庭のお話なんだけど、もともと結局祖母や母たちも普通の人。徐々に徐々に引力に引っ張られああなっちゃったんだろうなーと思わずにはいられない。

この言葉では最近の白人の貧困で思い出すのは、マーゴット・ロビーのアイ,トーニャ、ハビエル・バルデムのビューティフル、ケン・ローチのダニエル・ブレイクとかを思い出すけど、他の映画はもうそういう流れにいるという設定だけどこの映画はこの流れや引力への憎悪がにじみでて気持ち悪いといえば気持ち悪い。多分私がアメリカ人のリアリティを知らないからだろう。

お母さんはジャンキー、お父さんはいない。炭鉱の街は荒廃し、いまや街中に昼間からジャンキーがうろつく、捨てられた人々。落ちていくしか道はなかったような家庭環境。このスパイラルを冷静に見つめるJDの目。美術館や外食の楽しみもしらないひとたち。薬に走るぐらいしかなかったのだろうか。

こういう人たちがトランプをホワイトハウスに送ったのはなんとなく理解できる。トランプなら救ってくれると思ったのだろう。トランプは人の心を読んでこういう人たちを殊に味方に取り入れたんだろうなぁ。

とにかく、おばあちゃん役のグレン・クローズは、さすがだわ。この人だいたい、憑依する人だけど今回は髪型からメガネからすべて本人に似せて降臨。

お母さん役のエイミー・アダムスは実は私好きな女優さんで、可愛い顔の中に、いつも悲しさみたいな目を表現できる珍しいアメリカの女優さん。決してこの人綺麗だけじゃなくて、悪巧みの顔もとてもかわいい。アメリカン・ハッスルの愛人、Viceのど根性奥さん、Cathe me if you canのおつむの足りない看護婦と、..でみてきた中でも一番あばずれでお肌や髪の乾きっぷり、睨みがいい。

いちいち2000年頃のセットや背景がいい。ほんのちょっと前なのにねー。つい昨日みたいだけど。

お姉ちゃんの家の近所の人のサッカーママパーティでお姉ちゃんが最後しっかり使い捨てのはずのプラスチックのナイフやフォークを洗剤で洗ってたのはとてもしみたわ。そうよ。もったいないもの。一回で捨ててられない。こういう細かい所のアメリカ基準からいう貧乏ぽさ(今ではエコロな行動と呼ばれる)もしっかり描かれててよかったわ。計算機のくだりも実はほんとうの話。最近は学校でもリサイクルや学校が貸してくれたりもうするんだけどね。象徴的に描きたかったのだろう。

最後に話す「おばあちゃんをもっと自慢しとけばよかった」だって彼を育てたのはおばあちゃんだもの。彼女の価値観でできたのが彼。聖書の言葉も全部教えてくれた人。ここで泣かせるという演出方法が定番過ぎて白けるときもあるが、わたしはそのまま涙腺崩壊。・・素直に泣きます。ここでロン・ハワードにはめられます。やられました。ああ、私って単純。

母親目線感想としては、、彼女は決して人生にルーザーじゃない。こんな立派なおばあちゃんから生まれてこんな素敵な息子を育ててくれたんだもの。ただ彼女は不運で不幸だった。社会も付き合う男も誰も彼女を助けなかった。一回落ちたらそのままだった。堕ちる引力がすごい土地にいたんだから。スパイラルから抜け出すのは非常に大変だったとは思う。この引力はもう奇跡がないと離れることができない。だからこのお話は努力やラッキーが重なり奇跡が起きたかなりハッピーエンド・・だから白けるのか?

しかしお姉ちゃんの女優さん、、、ジェニファー・ローレンスそっくりやん。見間違えたわ。

音楽もベテランのHanz Zimmer・・公式に当てはめたようなエモーショナルな音楽で仕掛けてきます。

引力に逆らうおばあちゃん最強です!


恨みでもあるのですか?ぐらいボロクソに書くインディペンデント紙
https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/films/news/hillbilly-elegy-ron-howard-b1764940.html