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何が起きたのミスシモン?『ニーナ・シモン〜魂の歌』

NinaSimonという偉大な黒人シンガーといえばこの曲でみんな知ってるとは思うのだけど、なんか、おしゃれなジャズみたいでしょ。今回もNetflixより、ドキュメンタリー『What happened, Miss Simone? 魂の歌

実はこの曲、1987年のChanelのNo5で使われたことでリバイバルヒット。私も多分このときからニナ・シモンの名前は知ってたけどこのドキュメンタリーで、もっと深く知りびっくり。もう。。。おしゃれさんでもなんでもないし。闘う女。この方。

最初の方で娘さんが「うちの母は、舞台に立つとニナ・シモンになってました。彼女の歌には怒りが溢れていました」と始まり彼女のイッてる、いや神がかりなすごい映像から始まる。やばいこの人なにかある。。もうずんずん引き込まれる。

彼女の才能を最初に見抜いたのは白人のユダヤ人のピアノの先生だった。お母さんが教会の牧師だったので教会でピアノを弾いてた少女に個人レッスンをして磨き上げた。レッスン中に彼女の人生で白い人は見たことなかったのでずっと彼女の白い存在を見ていたとも言っていた。ただ、音楽大学は受けても最終実技でおちた。当時は黒人で誰もクラシックをする人はいなかった。暗黙の了解があった。黒人はみんなジャズ、クラシックは白人のものだったから。明らかにはされてないが、彼女ほどの腕でなぜ入れなかったかの正式な謝罪はまだない。

誇り高き天才少女は、やがてジャズのプロの道へ進んだ。クラシック基礎を持ってたが活躍の場はジャズしか用意されなかった。芸名もつけた。名前のニナは子供ニーナから、シモンはイブ・モンタンの妻としても有名だったシモーヌ・シニョレから。才能は認められもちろん有名になる。当時の黒人運動に影響されて色んな曲も出した。活動家だった。結婚。そして壊れ始める結婚生活・・・警察官と結婚したがDV夫だった。離婚しアフリカに逃亡したり、一切の信用もなくし、財産を使い果たし、心も折れてきた。ボロボロになり忘れられた。実子の娘にも逃げられた。

移り住んだフランスでは、近所の子に「お前差別しただろ」と発泡し裁判になってる。しかしあるオランダ人貴族のファンにささえられ、彼のすすめで医者に見せたところ、双極性障害との診断が。(様子はまるであのラチェドに出てきた黒人女性の症状に似ててびっくりする)薬でだいぶ抑えることはでき、晩年はフランスに居を構え、コンサート活動していたが、薬の抑制のせいで若い頃のような市民運動に怒るようなコンサートではなかった。・・

すべての映像は彼女の怒りにあふれている。もちろん差別への怒り、旦那へのDVの怒り、子供が離れていったことの怒り、、すべて。。

ふと想像してほしい。例えば、腹黒、黒い考え、酸化して黒くなる、など何気なく使ってる私達の言葉。これは日本語だけではなく、どの言語でも黒という色が悪化させるなどの意味を多く含んでることも気付かされる。ここまでポリコレをしろといってるわけではない。黒という色に対してなにかとネガティブなイメージを持っている。(もちろん一部は別だけど)その無意識の行動や言葉遣いの延長で会ったことと気づくだけでも、この映画を見終えた意味があるなと思った。潜在意識に刷り込まれすぎて気づかないところを、別視点から見てる彼女の冷静さが痛い。

彼女はラップにだって不満だ。「ラップはあんな品の悪い言葉遣いを黒人にさせ黒人を陥れるためのシステムが作った音楽だ」とも。。

想像の絶する差別に疲れ果て、南仏の海の街で私が来た年に亡くなった。彼女の戦いはまだまだ終わってない。この現実。この世はまだまだ変えられなくてごめんねとしか言えない。。ほんと偉大な人を見直すドキュメンタリーでした。。

Netflix 『ニーナ・シモン~魂の歌』
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町山さんさすがお詳しい