ソフィア・ローレンが出る!というだけでとりあえず見てしまう往年のファンも多いだろう。公開ほやほやのネットフリック映画『これからの人生』がよかった!
さてお話はとてもいい話。
売春婦の子どもたちをアドリア海の港町で育てるローザ(ソフィア・ローレン)。彼女はコテコテのユダヤ人。収容所の生き残り。ヘブライ語をあきらかにアラブ系の孤児にも教えてしまうというとんでもないおばあちゃんなのだが、この生命力みなぎるばあちゃんが近所のDr.コーエン(これまたユダヤ名)の育てるモモ(セネガルの孤児モハメッド)を預かるところから始まる。実はモモとの出会いは近所のマルシェで大事なユダヤの燭台をひったくられたところからの奇妙な縁でもある。隣人のトランスの女性?男性?のけなげな母親ぶりも泣かせる。
それ以上にローザがこれだけ生命力のある見事な女優(メイクは粗めのヤマンバ感、背が高い、肉付きが良い、いくらおばあちゃんのふりをしてもなんか変だ)が演じちゃうとなんかちがうのね。もっと枯れてる女優(イザベル・ユペールとか)のほうが似合う気がする。
モモは麻薬の売人になり小遣い稼ぎに励むのだが、まるでイブラハムおじさんとコーランのオマールシャリフみたいな小物屋のおじさんが彼の集中力を見出し、ムスリム的な価値観を徐々に教えていくとかそういう話もあり。。
これ見た人はわかるとおもうけど、ソフィア・ローレンがとにかく目立ちすぎ!元気すぎ!髪の毛もふっさふっさ。ヤマンバメイクもなんか計算され尽くした感が、そう、彼女のアイラインの入れ方はこの60年かわってない。・・・ただどう見ても枯れたおばあちゃんに見えないの。自身もお母さんがひとりの母子家庭で育ったという彼女だからか役柄してもう神がかってる。なんかこの世の人の感じがしない。
レジェンド対決、アメリカの俳優一家出身のジェーン・フォンダがコミカル恋愛劇でネフリ現役ならイタリアで母子家庭から這い上がってきたソフィア・ローレンもイタリア映画で勝負。。ってところよね。もう好きにしてー。香水の香りがむんむんするわ。
原作がロマン・ゲリーで監督がソフィア・ローレンの息子というのも気になるが、(親ばか全開過ぎて泣ける・母ちゃん86歳の老体に鞭打って息子のために・・・・)2020年にはとてもタイムリーな話だと思う。ユダヤ、ムスリム、難民、強制退去などのイタリアが抱える問題もでてくるし、あたしはとりあえず、ユダヤもムスリムもレスペクトする映画はみなさんにおすすめする。
この映画で良かったのはユダヤもムスリムも「いとこ同士」っていう緩さがしっかり描けてるところ。ほんとうにそうなの。パレスチナでは喧嘩してるけど、普段ヨーロッパでは彼らはみんなぐだぐだいいながらちゃんと共存しているんだよ。あと、人はいくらムスリム名をもらったからって生まれたときからムスリムではない。ムスリムになるのだ。ライオンという幻覚を用いながらも、丁寧にムスリムへのレスペクトを忘れない。ローザと結婚しないの?というモモの質問にも緩く答える。だって神が認めてるのなら神の子なんですから。厳しさとともにその曖昧さ、緩さがイタリアの庶民的景色と溶け合いとてもよかった。